機能から生まれたデザイン、機能美

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時計に限らず、現代ではあらゆる製品にデザイナーを起用しています。
現代は時計ももちろんデザイン専門の方が手がけているわけですが、アンティークなど古いものは現代と違い、開発者がデザインも手がけていたと聞いたことがあります。事実ではないかもしれませんが、このデザインについて聞いたことがある逸話があります。

フランスで革命を起こし、英雄となったナポレオン一世。1769年8月15日に生まれ、1821年5月5日に人生の幕を閉じるわけですが、もちろんこの時代は懐中時計が主流でした。
時間を見る、という習慣が一般的に根付いていたのかはわりませんが、現代のようにデジタルが存在していないのは確かで、皆で時間を共有する、という概念が無かったのかもしれません。

癇癪(かんしゃく)持ちだったと言われるナポレオンは、寝る間も惜しんでいたと聞いたことがあります。時間を惜しむがあまり、時計の蓋(フタ)を開く行為がわずらわしいということで、持っていた刀剣で懐中時計の中央部分を繰り抜き、蓋(フタ)を閉じたままでも時刻を確認できるようにした、という逸話が残されています。

この時代の時計という文化は、そんなに普及していなかったと思われます。
まず、現代であれば新しいものが世に誕生するとインターネットや広告などで一気に情報が拡散されます。しかし情報が流通する方法がないこの時代は、同じヨーロッパの中でも最新の時計がどれだけ普及していたか疑問なのです。

時代背景から考えると大量生産されていなく、技術を持った時計師が一本一本手作業で時計を製造していたと言われています。なので時間を見る、という概念があったのかは不明なので、この逸話がナポレオンの性格を表現するための例え話であったと思っています。

しかし、一つ肯定できる部分があるのですが、この時代で王族や貴族など高い階級層が時計を持つ場合、やはり金無垢や銀無垢などそれなりの高級素材を使っていた贅沢な時計である可能性があります。

金無垢はとても柔らかく、ナイフなどで蓋(フタ)をくり抜くことができた、という部分は本当なのかもしれません。

通常、蓋(フタ)のある懐中時計を「ハンタータイプ」と呼びます。
理由は、狩猟をしていたハンターが獲物を追い匍匐前進(ほふくぜんしん)する時に上着やベストに収納している懐中時計のガラスが割れてしまうため、それを防ぐために蓋(フタ)をつけた事から由来してます。

その蓋(フタ)への装飾が流行し単なる実用品から変化したと言われています。
懐中時計の表蓋を繰り抜いたデザインを「ナポレオンタイプ」と呼んだり「ハーフハンター」「デミハンター」とも呼びます。

ハンタータイプにしろ、ナポレオンタイプにしろ、デザイナーが生んだデザインではなく、機能から生まれたデザインである「機能美」があるのです。

バイヤー:合田圭四郎

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