機械から感じる人間味

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まだ腕時計が一般的でなく、懐中時計を一人の技能士が一貫で製作していた時代は、時計のデザインも技能士が行っていたと聞きます。

ブランドにもよりますが、現在では技能士とは別にデザイナーが存在し、専門知識を使い新しいデザインを生み出しています。昔とは違い量産なので、分業して時計を創り上げていくわけです。

ブランドの規模や流通量により時計の製造方法は変化してきます。
ほとんどを機械で自動的にこなすブランドもあれば、組み立ては人が全て行うブランドも存在します。

どちらにせよきちんと時計を組み立ててくれていると思うんですが、入荷品を見ていると気が付かない程度で部品が変わってしまっている場合があるのです。

つい先日入荷したエポスの懐中時計では、入荷時に気付かなかったけど、いつの間にか針が変わってしまっているモデルがありました。もともとは葉っぱの形したリーフ針という針が使用されていますが、入荷したのは先端が丸いデザインが特徴的な、ブレゲ針になっていたのです。
てっきりマイナーチェンジでパーツが変更されたのかと思い、念のためメーカーへ確認してみたところ、チェンジはされていないとのこと。

不思議に思っていたら、実は部品に予定されていない物が取り付けられてしまったイレギュラーなモデルであることが判明しました。

余儀なくパーツや仕様が変更されることは日常茶飯事なので特に驚きはありませんが、カタログにもメーカーサイトにも情報が掲載されていない場合は、こういったイレギュラーモデルである可能性が高いです。

決して故障や不良品というわけではなく、たまたまパーツ違いで入荷してしまったモデルは、同じモデルでも人とは違う個性を最初から備えていることになります。

子供の頃、10円玉の周りにギザギザ模様がついていた、通称「ギザ10」と呼ばれるものがあり、たまたま見つけると嬉しい気持ちになったりしたものですが、それに似ている感覚ですね。四つ葉のクローバーもそれに近い感覚と言えます。

入荷するモデルが一律の品質で、スペックもきっちり同じもの作り続けるという事は高い技術が求められます。それはそれで品質の高さを実感しますが、個人的にはたまにメーカー側も気付かず予定されていないパーツが入っているものに人間味を感じます。

スイスののどかな時計工場で、一生懸命時計を組み立てている熟練の職人が、うっかり違うパーツを組み合わせてしまった光景を想像すると、やはり人間ありきで時計が存在するのだと思いました。

どんなに技術が進化しハイテク化が進んでも、機械式時計には人間らしさを感じます。

バイヤー:合田圭四郎

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